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ナベヅルの民話

印刷用ページを表示する更新日:2017年5月10日更新 <外部リンク>

ナベヅルの民話~つる柿~

八代地区には、ツルにまつわる民話がいくつか残されています。ここでは、ツルと村人との心温まる話の「つる柿」の民話を紹介します。

民話1

民話2むかしむかしある日のこと、親子のツルが空高く飛んでおりました。
八代の里は、柿の木の多いところ。ちょうどそのころ、枝もたわわに実った柿が、サンゴ色にうれて、夕日に美しく輝やいておりました。子どものツルがこの柿を見て、食べたいと欲しがりました。けれども、ツルは、木の枝にとまることができません。

 

民話3そこへ、一羽のカラスが飛んできました。柿の枝にとまると、さっそく、うれた柿をおいしそうに食べはじめました。


 

 

民話4これを見て、親ヅルは柿の木の下へ降りて、「カラスさん、わたしたちにも一つ、うれた柿をとってくださいな。」と頼みました。カラスは「もいでやってもえ~がの~。お前さんは、きりょうよしじゃ、よううれた柿じゃ~、きれいな着物がよごれるじゃろうから、まぁこれがよかろうて。」といって、まだうれていない、固い柿をとってツルに投げました。
 

民話5「カラスさん、すみませんが、もっとうれたのを頼みます。子どもが欲しがりますので・・・」と、ていねいに頼みました。
「そうかぁ~、それならちょっと待っちょけ~や」と言ったきり、今度は、自分だけよくうれた柿を食べ種やヘタを下へバラバラと投げ捨てました。


 

民話6いつまでたっても取ってくれそうもありませんので、ツルは、また頼みました。
するとカラスは腹をたてて、「それなら、お前さんがのぼって好きなのをもぎんされ。」と言ったかと思うと、また固い柿をとって今度は、ツルに投げつけました。

 

民話7これを、先ほどからじっと見ていたお百姓さんがありました。
親子のツルをかわいそうに思ったお百姓さんは、急いで柿の木に登ると、カラスを追い払い、よくうれた柿を二つも三つももいでツルに渡してやりました。

 

 

民話8ツルの親子はよろこんで、すっかり食べると、「クルー、クルー、クルー」と、お礼をいいながら空高く飛んで行きました。

 

 

 

民話9それから、しばらくたった、ある寒い日のことでした。このお百姓さんの家に、たいへんなことが起こりました。
お百姓さんの子どもが干柿を食べて、柿の種をのどにつめてしまったのです。里には、お医者さんもいませんので、お百姓さん夫婦は、日ごろ信心する天神さまへ助けをもとめて、お祈りに行こうとしました。

 

民話10その時、いつぞやのツルが、このお百姓さんのあわてた姿を見て、その訳をたずね「わたしがお助けしましょう。さぁ急ぎましょう。」とお百姓さんの家へ飛んで行きました。
そしてツルは、苦しんでいる子どもの口を開けさせると、その長いくちばしで、なんなく柿の種をついばみ、取り出してしまいました。

 

民話11お百姓さん夫婦は大よろこびで、ツルにお礼を言い、そして「八代の柿ぁ~、うまいんじゃが、なしてか種がこう多うてしょうがない。種さえなけりゃ~、八代の柿ぁ~周防一なんじゃが。」と言いました。
それを聞いたツルは、うなずくように首を大きくふると、空高く飛び立ってゆきました。

 

民話12ツルは天にのぼって神様に今までのことを話しました。
神様は、ツルが八代の人々に優しくされたのをたいへんよろこばれ、ほほえみながら「そうか、よう分かった。 これからも八代の里の人たちと仲良くするのじゃぞ」とこたえられました。


 

民話13これからです。八代の柿は、木になる間は種があっても、干柿にしてしまうと、どうしたわけか、種がすっかりなくなってしまいます。
こうして八代では、ほした柿を干柿とも、つるし柿とも言わず、ツルの恩返しと考えて、いつからか『つる柿』というようになったそうです。


 

民話14