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ナベヅルの生態

印刷用ページを表示する更新日:2019年1月25日更新 <外部リンク>

鶴いこいの里の展示を中心に紹介します。

ナベヅル基礎知識

ナベヅル
ナベヅル

ナベヅルは、ツル科ツル属に分類される大型の鳥類で、シベリア南東部から中国北東部で繁殖し、冬に日本にやってくる渡り鳥です。

全体的に灰黒色をしていて、首から上は白く、頭頂は赤い皮膚が露出しています。身長は、90~100cm、翼長は45~50cm、くちばしは10cm程度で、体重は3.5~4kgほどです。

成鳥と幼鳥の大きさはほとんど変わりませんが、幼鳥は少し茶色がかった色で、特に首から上に茶色の産毛(うぶげ)が残っていることで成鳥と区別することができます。

ナベヅルを漢字で書くと「鍋鶴」で、鍋の底の墨色からきているといわれています。

IUCMレッドリスト(2013)では現在のナベヅルの世界での推定羽数は11,600羽とされ、そのほとんどが日本国内(主に鹿児島県出水市)に渡ってきます。同リストでは絶滅の危険が増大している種として絶滅危惧2類に指定されています。

ナベヅル大きさ

ナベヅルの見分け方
成鳥と幼鳥の見分け方

ツルの訪れ(渡来)

ツルの訪れ
ツルの訪れ

周南市八代で秋の収穫も終わり初霜が降りる10月下旬ころ、シベリアから厳しい寒さを避け、暖かい場所で越冬するために海を越え周南市八代に渡ってきます。

翌年の1月中旬ころまで、1~2家族単位で渡来してきます。初渡来日は、市(旧熊毛町分を含め)が観測を始めて、早い年で10月中旬、遅い年で11月上旬となっています。

夏の間、広大なシベリアで暮らしていたナベヅルは、しばらくは人間や車を怖がり、特に警戒心が強くなっています。

群とナワバリ

威嚇の様子
威嚇の様子

ナベヅルは、家族単位で一定のナワバリをもっています。ナワバリの境界は、アゼや小径、溝などで、広さは1ha以上にもなることもあります。勢力の強い家族は、よい条件の広いナワバリをもち、他のナベヅルが自分たちのナワバリに進入してくると激しく鳴き叫び威嚇して追い払います。この場合、進入したツルが反撃に出ることは少ないようです。

若いツルはナワバリをもたないで群れをつくり、他の家族のナワバリを自由に移動します。

ツルの食べ物

ドジョウを食べるナベヅル
ドジョウを食べるナベヅル

ナベヅルは、動物性のものと植物性のものの両方を食べる雑食性の鳥です。当地に越冬期間中は、モミ、麦、草の実、ドジョウ、タニシなどを食べているようです。

エサ場では、自然のエサだけでなく、人間がまいているエサも食べます。エサをよく食べるのは朝と夕方です。

ツルの1日

ナベヅルたちは毎朝一定の明るさになるとネグラから飛んで来て、一日をエサ場で過ごします。

エサを食べたり、羽づくろいをしたり、休息したりしています。また、オスとメスの求愛行動(2羽が向かい合って独特の飛び方や羽を広げたりする動作)を観察できることもあります。

そして、日暮れとともに再びネグラに帰っていきます。

1日の行動

ツルの旅立ち(北帰行)

ナベヅルが繁殖するためには、エサが豊富で、広い湿地が必要です。そこで、周南市八代にエサがたくさん残っていても、春が来るとシベリアへ再び渡っていきます。これを「北帰行」といいます。

旅立ちの日が近づくと全部のナベヅルが一か所に集まるようになり、西の方角を向いて首を高くあげたり、羽ばたきをしたりします。穏やかな日の朝、いよいよ旅立ちの時。集まっていたツルはいっせいに西に向かって飛び立ち、上空で旋回を繰り返しながら高度をあげ、列を整えて空の彼方に消え去ってしまいます。

一度旅立ったツルたちが、途中天候などが原因で引き返して来ることや、第2陣、第3陣に別れて旅立つことも少なくありません。

日本からシベリアまでは約2,000km。この距離を20~40日程度かけて飛んでいきます。渡りによって命を落とすナベヅルは決して少なくありません。近年では渡りの中継地での開発も進み、ますます危険が大きくなってきています。渡りの途中では、幼鳥が親鳥から離れる「子別れ」も起こります。子別れは、親鳥が次の繁殖の準備を始めるまでに起こり、親から離れた若鳥は若鳥だけの群れを作ります。

北帰行の開始は、平成のはじめ頃まで、2月下旬から3月初旬でしたが、近年では3月下旬(平成28年度の渡来ツルは4月1日に北帰行開始)と遅くなっています。

八代のツルの北帰行

ナベヅルの子別れ
子別れの様子

繁殖地へ

ナベヅルの繁殖地シベリアは、ロシア連邦に属し、極寒の地でタイガという針葉樹林が広がっています。ナベヅルはシベリアの「マーリ」と呼ばれる湿原で夏を過ごします。マーリはミズゴケと小規模の林や低木疎林からなっており、周囲を森林に囲まれ、川に沿ってあちこちに点在しています。ここにはナベヅルの餌となる植物や動物が豊富にあります。

3月に日本を飛び立ったナベヅルは4月初旬に繁殖地につき、まず繁殖のためのなわばりを作ります。なわばりの広さは環境条件によっても異なりますが4~6km程度です。巣はヨシやスゲ、低木の枝などでできており、直径50~80cmです。

卵は2個産みオスとメスが交替して暖めます。卵は1か月ぐらいでかえり、生まれたヒナはすぐに巣を離れて親と一緒にエサを探すことができるようになります。5月ごろに生まれたヒナは、日本に渡りをする10月ごろまでにはほぼ親鳥と同じ大きさに成長します。

繁殖地でナベヅルが食べているエサはコケモモなどの実、草の花、種子などの植物質のものや、カエル、小魚などの動物質のものです。また、採餌は巣からかなり離れたところで行うこともあります。

ナベヅルの繁殖地
ナベヅルの繁殖地(黄色い部分)

ナベヅルのヒナ
ナベヅルのヒナ