農地所有適格法人
1 農地所有適格法人とは
農地所有適格法人とは、自ら農地等(農地または採草放牧地をいいます。以下同じ。)を所有して農業経営を行うことのできる法人です。
一般の株式会社などは原則として農地等を取得できませんが、一定の要件を満たしたこの法人だけが所有権を取得できます。
農地法((昭和27年法律229号)第2条第3項では、所有権も含めた農地等の権利を耕作目的で取得できる法人として、一定の要件を満たすものを農地所有適格法人と規定しています。
2 法人経営のメリット・デメリット
農地所有適格法人に限らず、農業経営の法人化には、さまざまなメリット・デメリットがあります。
(1)メリット
・経営責任に対する自覚を促し、経営者としての意識改革が促進されます。
・家計と経営が分離され、経営管理が徹底されます。
・財務諸表の作成の義務化により、金融機関や取引先からの信用が増します。
・社会的信用力やイメージが向上し、商品取引や従業員の雇用等を円滑に進めることができます。
・農業法人に就農することにより、初期負担なく経営能力、農業技術を習得できます。
・幅広い人材(従業員)の確保により、経営の多角化など事業展開の可能性が広がり、経営の発展が期待できます。
・農家の後継者でなくても、役員、従業員の中から意欲ある有能な後継者を確保することが可能です。
・役員報酬を給与所得とすることによる課税軽減や欠損金の10年間繰越控除など、税制上の優遇措置を受けられます。
・融資限度額(農業経営基盤強化資金(スーパーL資金)の貸付限度額)の拡大など、大きな資金を集めやすくなります。
・社会保険、労働保険の適用により農業従事者が福利厚生等の恩恵を受けられます。
・農事組合法人である農地所有適格法人は、県税の法人事業税が非課税になります。
(2)デメリット
・設立時(登記、資本金の準備)および法人の維持(会計事務、税務申告等)に費用と手間がかかります。
・利益がなくても最低限、法人県民税(均等割)、法人市民税(均等割)の納税義務が生じます。
・各種社会保険制度の導入により、事業主負担が発生します。
・納税猶予の適用を受けている場合は、農地等の権利を法人に移転すると、納税猶予の期限に影響がある場合があります。
・経営移譲年金の受給者は構成員(持分または株式を有している)になった時点で経営移譲年金が支給停止になります。
・農業者年金(新制度)の特例付加年金の受給者は、法人の構成員として農業に常時従事(年間150日以上)すると、特例付加年金が支給停止になります。
・農業者年金の被保険者は加入資格が喪失します。
3 農地所有適格法人の要件審査
農地所有適格法人の要件の審査は、農地法第3条第1項の許可申請や農地中間管理事業の推進に関する法律(平成25年法律第101号)第18条第1項に規定する農用地利用集積等促進計画の作成の時点で行われます。
周南市農業委員会では、農地法第3条第1項の許可申請の際に、農地等権利移動許可申請書に添付された法人調書、定款または寄附行為の写しおよび組合員名簿または株主名簿の写しにより、農地所有適格法人の要件を確認します。
4 農地所有適格法人の要件
農地所有適格法人は、次の4つの要件のすべてを満たしているものをいいます。
(1)法人形態要件(農地法第2条第3項本文)
農地所有適格法人として認められる法人形態は、次のいずれかです。
・農事組合法人
・株式会社(ただし、発行する株式の全てについて、譲渡により取得する場合には、当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めがあること。)
・持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)
(2)事業要件(農地法第2条第3項第1号)
農地所有適格法人の主たる事業は、農業(その行う農業に関連する事業、農業と併せて行う林業および農事組合法人が行う共同利用施設の設置または農作業の共同化に関する事業(以下これらを「関連事業等」をいいます。)を含みます。)でなければなりません。
ア 「法人の主たる事業が農業」であるか否かの判断基準
(ア)既存の農地所有適格法人が農地等を取得する場合
・直近3か年の法人の売上高の過半が農業と関連事業等であることが必要です。ただし、異常気象等により農業の売上高が著しく低下した年があれば、その年を除く3か年となります。
(イ)新規の法人設立、既存の法人が農業参入する場合
・これから3か年の販売計画で、農業と関連事業等の合計売上高が、今後3か年の法人の売上高の過半を占めることが必要です。
イ 「その行う農業に関連する事業」とは
「その行う農業に関連する事業」とは、法人の行う農業(耕作、養畜、養蚕、養蜂など)と一次的な関連を持ち農業生産の安定発展に役立つものであって、次に掲げるものをいいます。
(ア)農畜産物(自己の生産だけでなく、他から購入したものを加えることも可能。以下同じ。)を原料または材料として使用する製造または加工
(イ)農畜産物の貯蔵・運搬・販売
(ウ)農畜産物もしくは林産物を変換して得られる電気または農畜産物もしくは林産物を熱源とする熱の供給
(エ)農業生産に必要な資材の製造
(オ)農作業の受託
(カ)農村滞在型余暇活動に利用される施設の設置および運営ならびに農村滞在型余暇活動を行う者を宿泊させること等農村滞在型余暇活動に必要な役務の提供
(キ)営農型太陽光発電設備による電気の供給
※(イ)~(キ)は、農地法施行規則(昭和27年農林省令第79号)第2条各号
(3)議決権要件(農地法第2条第3項第2号)
誰でも農地所有適格法人の構成員(農事組合法人にあっては組合員、株式会社にあっては株主、持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)にあっては社員をいいます。以下同じ。)になれます。
ただし、株式会社にあっては株主総会における総議決権、持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)にあっては総社員の過半(2分の1超)は、次に掲げる者でなければなりません。その上で、株式会社であって、会社法の定めがある種類の株式(種類株式)を発行している場合には、その種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会においても、総議決権の過半は、次に掲げる者でなければなりません。
ア 法人に農地等の権利を提供した個人(農地中間管理機構を通じて法人に農地等を貸し付けている個人を含みます。)
イ 法人の農業(関連事業等を含みます。)の常時従事者(原則年間150日以上従事(農地法施行規則第9条第1号)。農作業に限定されるものではなく、営農計画の作成、マーケティング等の企画管理労働も含みます。以下同じ。)
ウ 法人に基幹的な農作業を委託した個人
エ 法人に農地等を現物出資した農地中間管理機構
オ 地方公共団体、農業協同組合・農業協同組合連合会
カ 農業法人投資育成事業を行う承認会社
(4)役員要件(農地法第2条第3項第3号、第4号)
ア 農地所有適格法人の理事等(農事組合法人にあっては理事、株式会社にあっては取締役、持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)にあっては業務を執行する社員をいいます。以下同じ。)の過半は、法人の常時従事者である構成員でなければなりません。
イ その法人の理事等または法人の農業について権限と責任を有する使用人(いずれも常時従事者に限ります。)のうち1人以上の者が法人の農作業(耕うん、整地、播種、施肥、防虫害防除、刈取り、水の管理、給餌、敷わらの取替え等耕作または養畜の事業に直接必要な作業をいいます、)に従事(原則として60日以上従事(農地法施行規則第8条))する必要があります。
5 農地所有適格法人の報告の義務
農地所有適格法人は、毎事業年度の終了後3か月以内に、農業委員会に農地所有適格法人報告書を提出して、事業の状況等を報告しなければなりません(農地法第6条第1項、農地法施行規則第58条第1項)。
・農地所有適格法人報告書 [PDFファイル/320KB]
農地所有適格法人報告書 [Wordファイル/54KB]
この毎年の報告をせず、または虚偽の報告をした場合には、30万円以下の過料に処せられます(農地法第68条)。
6 農地所有適格法人の要件の適合状況の把握
農業委員会は、法人ごとに、その法人が農地所有適格法人の各要件を満たしているか、満たさなくなるおそれがないかを確認するため、5の報告書の内容を、農地所有適格法人要件確認書に取りまとめ備え付けておくものとします。
また、報告書の内容のみならず、日常業務等を通じて得た情報についてもこの確認書に取りまとめるものとします。
7 農地所有適格法人への勧告
農業委員会は、報告書の内容、日常業務等を通じて得た情報等から判断して、農地所有適格法人の要件を充足しない、またはそのおそれがある法人に対して、要件を満たさなくなることのないように、必要な措置をとるべきことを勧告するものとします(農地法第6条第2項)。
この勧告に際して、農地法第6条第3項に規定する農地等の所有権の譲渡しをする旨の申出の意思があるかどうかを確認するものとします。
8 農地等の所有権の譲渡しのあっせん
農業委員会は、7の勧告を受けた法人からその所有する農地等について所有権の譲渡しをする旨の申出があったときは、これらの土地の所有権の譲渡しについてのあっせんに努めるこのとします(農地法第6条第3項)。
9 周南市農業委員会農地所有適格法人の要件審査及び報告手続等の係る事務処理要領
以上の農地所有適格法人の要件審査および報告手続その他関連する事務について、周南市農業委員会では、周南市農業委員会農地所有適格法人の要件審査及び報告手続等に係る事務処理要領(令和6年10月10日施行)を定め、運用しています。




