本日ここに、令和6年度当初予算案をはじめ、関係諸議案のご審議をお願いする市議会の開会にあたり、私の市政運営に臨む所信を申し上げ、市民並びに議員の皆さまのご理解とご賛同を賜りたいと思います。
昨年末、国立社会保障・人口問題研究所から2050年の地域別将来推計人口が発表されました。それによると今から26年後の本市の人口は、2020年との対比で33.5%の減少となり、10万人を大きく割り込む9万1千413人とされています。
本市の「人口ビジョン」では、2050年の推計人口を10万1千507人と示していましたが、今回の推計はそれを約1万人も下回る衝撃的なものとなっています。
私は人口減少問題の厳しい現実と予測される地域の姿を思うと、改めて事の重大さと責任を痛感しました。そして、今後、この差し迫る危機に際し、本市が傾注すべき事柄を次の3点に集約して、真正面から取り組んでいかなければならないと覚悟したところです。
その第1は市民・企業・市役所で構成する「信頼のトライアングル」において、人口減少の深刻な状況とその切迫性に対して真剣に共通認識を深めていくこと、第2は人口減少対策の質を高め、量を確保して使命感を持って、まちづくりの一環として進めていくこと、第3は「2050年を乗り越えられる周南市になる」としたパーパスを、すべての施策展開において市役所の存在意義をかけてこれまで以上に徹底していくことです。
本市はこれまで人口減少に抗い、持続可能性を追求するという方針で市政に臨んできました。しかし、時代はさらなる緊張局面を迎えており、この難局に立ち向かうには「戦略の転換点を逃さない」という冷静な判断と決断する力が求められていると考えます。
自治体経営で「戦略の転換点」とは、地域の将来を決定づける「環境の変化」を指します。
私は、現在の人口減少の状況はまさにこの「環境の変化」であり、今、現在が「戦略の転換点」にあたると判断しています。そして今こそ、まちづくりの細部に渡るまでこの認識を徹底させ、これまでの戦略の修正も辞さない覚悟で勇気ある決断を行ってまいりたいと思います。
国内外の大手企業でさえも「環境の変化」に気づけず、「戦略の転換点」を逃した結果、重篤で悲惨な経営危機に陥った事実があります。
自治体経営においても「戦略の転換点」を逃すことは、行政組織としての実質的な存在意義を失うばかりでなく、地域の持続可能性や市民益に取り返しの付かない大きな損失を与えることになります。私は、改めてこの人口減少という危機の重大性を認識し、全職員の知恵と力を結集して今後の市政運営に努めてまいりたいと考えます。
また、先日、民間の有識者でつくる「人口戦略会議」が、2050年からさらに50年後の2100年の総人口を8千万人で定常化させるという提言を行いました。
そこでは、今後は人口の減少を抑えて止める定常化策の推進と、人口が3分の2になっても成長して豊かな生活が送れる地域の強靭化策の必要性を説いています。人口減少のリスクを過度にとらえ、「何もしない」「何もできない」との諦めと、無策の境地に陥るのではなく、この危機を地域の強靭化を進める「戦略の転換点」としてとらえ、地域の未来を生むポジティブな志向こそが必要なのだと読み取りました。
このように現在の人口減少という危機は、まちづくりの方向や考え方を変えていく「戦略の転換点」であり、私たちの暮らしをより幸福度の高いものにする可能性を有していると考えます。
力強い地域経済のもとで、市民が自分らしさを体現し、安心安全が保たれ、文化が薫り、学び集える、そして何より、こどもがまんなかにいる地域、こうした地域の創造で、私はこの危機を乗り越えてまいりたいと思います。
それでは、令和6年度の取り組みについて、ご説明いたします。
まちづくりの基本的な第一の視点として「市民に寄り添う~ひとづくり・暮らしづくり~」について申し上げます。
本市は想定を遥かに超えて進む人口減少により、大変厳しい現実に直面しています。
加えて高齢者人口の漸増、自然災害の激甚化、脱炭素社会の推進など、未来に向けた取り組みの必要性に迫られています。
さらに、AIに象徴される科学技術を人口減少対策として取り入れ、持続可能なまちづくりに結びつける専門性の高い戦略も求められています。
昭和・平成の時代には想像できなかった厳しい状況は、経験値頼みの判断や様子見という姿勢がもはや許されない現実となっています。
こうした中でも、本市の「市民に寄り添う」「分かりやすい市政の実現」という根本姿勢には何も変わるところはなく、むしろこの状況だからこそ、市民に寄り添い説明や対話を重ねていくことの意義はますます高いものがあると考えます。
今後は「Y・Z・α世代との対話」を戦略的に進め、この世代の感性と生活感や将来予測を施策展開の重要なファクターとして位置づけてまいります。
もう一方では市民と企業と市役所で構成する「信頼のトライアングル」の多面的重層的な結びつきを、さらに強固なものにしてまいります。
それでは、本視点に基づく4つのプロジェクトについて、順次申し上げます。
1つ目は、「みんなで子育て応援プロジェクト」についてです。
未来を担う子ども達を育む施策は、人口減少対策の大きな柱の一つです。
本市では、昨年5月、全国の自治体で初となる「こどもまんなか宣言」を行いました。子どもの権利が尊重されること、生き抜く力を育むことができる最適な環境づくりに努めるなど、子どもたちとの約束を明らかにしたものです。
宣言2年目となる令和6年度は、こども局を「こども未来部」に改組し、こどもまんなか宣言が暮らしの中で普通のこととして根付いていくよう、全庁一丸となって「こどもまんなか社会」の実現に取り組んでまいります。
国に先駆けて母子保健と児童福祉を一体的に実施していた「あんしん子育て室」は、令和6年度より「あんしん子育て推進課」として改組し、児童福祉法の改正に伴い「こども家庭センター」機能を設置します。
従前のサービスに加え、子育て家庭へのきめ細やかな伴走型支援と包括的な相談支援体制を強化し、医療・福祉・教育等のネットワークを生かして地域課題を的確に捉えながら、「第3期周南市子ども・子育て支援事業計画」を策定し、子ども施策を総合的に推進します。
まず、子どもの医療については、経済的理由から受診を躊躇することがないよう、令和6年4月から、高校生年代までの医療費を完全無料化します。
妊婦の方は、歯周病にかかりやすく、進行すると早産や低体重児出産の危険性が高くなるといわれていることから、「妊婦歯科健診の受診率向上」に向けた啓発活動等を周南公立大学と連携して推進します。
さらに、1歳6か月児・3歳児の歯科健康診査においては、親子で受診できるよう、保護者も無料で実施します。
また、先天性難聴児の早期発見・早期療育のために、全ての新生児が聴覚検査を受けられるよう、新生児聴覚検査費用の助成を開始するとともに、一次検査や精密検査の未受診者への受診勧奨と難聴児の保護者の不安に対する支援を確実に行える体制を確保します。
次に、保育の受け入れ体制についてです。
慢性的な保育士不足への対策として、周南公立大学との連携による潜在保育士への就職サポート講座を開催し、市内の保育・教育施設への就職に繋げます。
保育体制の安全強化については、新たに、登降園時や園外保育時など、特に見守りや児童の所在確認などが必要な時間帯に保育支援者をスポット的に配置します。
発達に課題を抱える児童の保育所等への受入体制を整備するため、私立保育所等への障害児保育事業の補助金を拡充します。障害児保育を担う保育士等を配置し、全ての子どもたちが健やかに過ごせる保育環境を整えます。
安心して子どもを育てることができる施設環境の整備にも取り組みます。
徳山北部及び徳山中央部の公立幼稚園・保育所の再編整備を進めるとともに、私立施設における保育の受皿確保のため、施設改修経費を補助します。
ファミリーサポートセンターについては、提供会員への活動助成金を新設するとともに、依頼会員の利用料金を見直します。
また、子育て支援センターを活用した預かりを開始し、提供会員と子育て家庭双方にとって安心で、利用しやすい環境を整えます。
地域子育て支援センターについては、既存の公立2センターを集約し、併せて新規で1施設の民間委託を開始します。両施設で開所日数を拡充した上、土曜日開所を実施するなど、利用者の利便性を高め、きめ細やかな支援体制を推進します。
2つ目は、「輝く子ども育成プロジェクト」についてです。
子ども達が安心安全に通学し、学校で学ぶことのできる環境づくりは大変重要です。
まず、通学路に関しては、交差点への防護柵の設置や舗装の改修などの整備を重点的に進めてまいります。
また、高校生の通学に要する経済的負担軽減を図るため、バスや船舶の通学定期券の購入補助を開始します。
快適な教育環境の整備のため、学校の特別教室の空調設備や学校全体の照明のLED化について、PFI方式での導入の可能性を踏まえた調査を行い、整備に向けた取り組みを進めるほか、引き続き、各改修工事を計画的に取り組んでまいります。
その他、小学校3校、中学校1校を対象に、市内に所在する民間プールを活用した水泳授業の実証研究に取り組みます。今後、成果や課題を整理し、民間プールの有効活用について検証してまいります。
大田原自然の家については、その移転先である休校中の中須中学校を改修する設計業務に取り組みます。
3つ目は、「市民を守る防災・減災プロジェクト」についてです。
近年、能登半島地震のような大規模な地震や災害が頻発しており、こうした災害は本市にとっても決して例外ではありません。
災害から市民の命や財産を守るため、今後もさらに高まる自然災害リスクに対し、予測される被害を回避・軽減ができるよう、あらゆる対策を行い、災害に強いまちづくりを進めます。
まず、防災に関する専門的な知識や災害対応などの豊富な経験を有する地域防災マネージャーを配置することで、市の防災対応力の充実・強化を図ります。
更に、災害対策本部体制の指揮下にドローンの活動班を編成するなど、機動的な対応ができる運用体制を構築し、災害への早期対応に繋げてまいります。
また、災害時における「逃げ遅れゼロ」を実現するため、防災ラジオの普及啓発をはじめ、県や関係機関と連携した率先避難促進の取り組みや自主防災組織、福祉専門職などの関係機関と協力した、避難行動要支援者の個別避難計画作成等の対策に引き続き取り組んでまいります。
避難所施設の停電対策としては、使用頻度の高い市民センター等へ、FCV・EVを活用した給電設備の整備を引き続き実施します。
大地震の発生への備えとしては、大規模盛土造成地の地盤災害の防止・軽減を図るため、地盤調査等の安全性の検証に向けた予備調査を実施するほか、木造住宅の耐震化や倒壊の恐れがあるブロック塀等の撤去についての支援を引き続き行ってまいります。
また、浸水被害から市民を守るため、市が管理する河川の改修や浚渫についても、計画的に進めてまいります。
4つ目は、「安心安全実感プロジェクト」についてです。
誰もがこのまちに住み続けたいと思えるよう、安心安全を実感できるまちづくりを推進してまいります。
まず、野犬対策については、デジタル技術の活用や効果的なパトロール方法の構築などを通じて、むやみなエサやり禁止の徹底に、より一層注力してまいります。また、保護された野犬の命を繋ぐため、野犬の譲渡活動や不妊去勢手術に関する補助金を創設・拡充します。
消防力の強化については、消防指令システムを更新整備します。
また、老朽化した車両や機庫の更新を行い、消防体制および活動能力の強化を進めます。更に消防用ドローンを新たに導入し、災害への初動体制と情報収集能力の強化充実を図ります。
年々増加する空き家への対策については、新たに「空家対策室」を設置し、空き家の発生抑制、適正管理及び利活用の推進を図ってまいります。
現在、高齢者や障害者、子ども、生活困窮者など、分野や属性を問わず、支援のニーズは、複雑化・複合化しています。そのため、関係機関が協働した重層的支援体制整備事業による包括的な支援体制の構築を進めてまいります。
特に、引きこもりへの対策に関しては、新たにひきこもり支援推進事業を実施し、本人や家族の個別の状況に合わせ、継続的に伴走できる支援体制を整備してまいります。
高齢者バス・タクシー運賃助成事業においては、令和5年度に申請実績のある方に対して助成券を郵送するほか、申請月にかかわらず年間48枚の助成券を交付するなど、事業を拡充いたします。
近年増加傾向にある帯状疱疹については、65歳以上の市民を対象に、ワクチン接種にかかる費用の一部を助成し、発症や重症化の予防に努めます。
次に、まちづくりの基本的な第二の視点として「シビックプライドを育む~まちづくり~」について申し上げます。
シビックプライドは「市民がこのまちに住む自信と誇り」を持つことです。
「住んでみたい」「いつかは帰って住みたい」「これからも住み続けたい」というそれぞれの願いを叶える「選ばれる都市」になるためには、シビックプライドが深く宿るまちであることが前提となります。
本市はシビックプライドを育む諸施策を「人口減少に抗う」重点施策として位置づけて、積極的に推進し、他のあらゆる施策においても趣旨が十分活かされるよう配慮してまいります。
また、人口減少社会はまちの現実の姿や魅力について、あるいは暮らしにおける利便性の問題や文化・教養の意義について、私たちに再考を促しています。シビックプライドの育み方についても、本当に何が必要でどう進めるべきなのかを事例や経験値に頼るだけではなく、高度な専門性や分析、若い世代の感性や将来予測などを積極的に活かしてまいります。
それでは、本視点に基づく3つのプロジェクトについて、順次申し上げます。
1つ目は、「住みたい・訪れたいまち創造プロジェクト」についてです。
地域振興部に「移住交流推進課」を新たに設置し、移住施策の強化に努めてまいります。移住定住の大きな要点となる「仕事」と「住居」に関する様々な施策と関連させ、移住定住支援の充実を図ってまいります。
観光事業については、引き続き、資源の掘り起こしや磨き上げを進め、特設サイト等を通じて地域の魅力を発信していきます。
また、鹿野地域においては、「鹿野地域観光振興プラン」を具現化し、周遊の起点となる観光交流拠点施設の整備に着手してまいります。
周南公立大学は、2千人未満の小規模大学における地域貢献度ランキングが2回連続で第1位になるなど、地域貢献大学としての歩みを着実に進めています。
本年4月には、新たにスポーツ健康科学科、看護学科、情報科学科が開設されます。これにより、入学定員も280人から480人となり、多くの若者がこのまちに集い、学び、活動します。
新設学科との連携事業やリカレント教育など、大学を生かしたまちづくりの更なる推進を図るとともに、学生がこのまちに定住するよう取り組んでまいります。
周南緑地では、駐車場の増設やサッカー場、陸上競技場をはじめとする体育施設等の整備を着実に進めるとともに、多世代のニーズを考慮した多種多様な教室プログラムの開催など、市民のスポーツ・レクリエーション活動を積極的に支援します。
学び・交流プラザでは、利用者の安全性と利便性の向上を図るため、交流アリーナの空調設備整備に取り組みます。
市民センターについては、今後も引き続き、公民館施設分類別計画の優先度に基づき、建て替えや大規模改修等を順次進めてまいります。
また、文化財の保護及び活用に関する事務を教育委員会から市長部局に移管し、文化振興を地域振興や観光振興の各施策と一体的に取り組みます。
多彩な文化資源によるまちづくりや地域の活性化を推進するため、関係団体と緊密に連携し、新たな文化振興の計画を策定してまいります。
2つ目は、「暮らしやすいコンパクトなまちづくり推進プロジェクト」についてです。
広域都市拠点として位置付けている徳山駅周辺では、今年の春に徳山駅前地区市街地再開発施設「TOKUYAMADECK」のグランドオープンが予定されています。市では、再開発に合わせて周辺市道のリニューアルを進め、回遊性の向上を図りながら、商店街を含めた中心市街地の賑わいと活力の創出に取り組みます。
公共交通の快適な利用を促進するため、交通結節点の環境整備を進めます。
西日本旅客鉄道株式会社が実施するJR戸田駅の老朽化した駅舎等の改築に合わせて駐輪場を整備し、乗り継ぎ環境の改善に取り組みます。
その他、「周南市国土強靭化地域計画」に基づき、中開作線や野村一丁目7号線の工事を引き続き行うとともに、臨海部と国道をつなぐ中溝線についても計画的に進め、企業活動や市民生活に密着した幹線道路や生活道路の整備に取り組みます。
また、現在、架け替え中である古川跨線橋については、鉄道事業者などの関係機関と連携し、一日も早い完成を目指してまいります。
市民館跡地の利活用も進めてまいります。
市内に点在する国の機関を官庁街の一角を占める市民館跡地に集約することについて、基本的な考え方の整理を行い、本市の都心軸及び行政ゾーンにふさわしいものとなるよう、市民館跡地の利活用構想及び文化小ホールの基本構想・基本計画の策定を行います。
3つ目は、「持続可能な中山間地域づくりプロジェクト」についてです。
中山間地域においては、人口減少や少子高齢化が急速に進行する中、これまで取り組まれてきた地域づくり活動の継続が求められています。
地域における自主的・主体的な活動を将来に渡り持続可能なものにするため、令和5年度に地域おこし協力隊を鹿野大潮地区に配置しました。令和6年度は、さらに鹿野渋川地区にも配置し、地域づくり活動の支援や隊員の定着につながる活動に、より一層取り組みます。
(仮称)徳山北部拠点施設については、実施設計や用地造成工事に着手するなど、令和8年度の供用開始に向けて着実に取り組んでまいります。
また、地域が求める機能やサービスを踏まえ、交通結節機能だけでなく、子育てや福祉、防災など、行政サービスや利便性の向上に繋がる拠点として、地域の皆さまに愛着を持って利用していただけるよう施設整備を進めます。
まちづくりの基本的な第三の視点として「周南の強みを活かす~産業づくり・行財政基盤づくり~」について申し上げます。
人口減少対策としてまちの強みを有効活用することは、基本中の基本とされています。本市は石油コンビナートをはじめ港湾や交通拠点、都市基盤、地域の文化や歴史、動物園や道の駅、ボートレース事業など、まちの強みとなる要素を数多く抱えています。
さらに医療福祉施設、周南公立大学をはじめとする教育施設、芸術文化や情報の発信拠点などを有していることは、本市の「人口減少に抗う」施策の展開に極めて有効であると考えられます。
こうしたまちの強みを戦略化することに加えて、未来を俯瞰して新たな強みを創造していかなければなりません。この創造は時代の流れを反映する質的にも内容的にも先進的なものでなければなりません。
脱炭素のみならず全ての産業振興、行政基盤づくりにおいて、ファーストムーバーとして走る気概をもって、人口減少対策につながる果敢な取り組みを展開してまいります。
それでは、この視点に基づく3つのプロジェクトについて、順次申し上げます。
1つ目は、「地域経済を支える産業力強化プロジェクト」についてです。
公共施設への太陽光発電の設置やLED照明の導入など、市が率先して行動し、市民に対してもEVやZEHへの補助、脱炭素社会への機運を醸成するための周知・啓発を図ります。
木質バイオマス材の効率的な生産に向けたモデル事業については、引き続き、成長に優れた早生樹の植林等の実証を進めてまいります。
また、グリーンカーボンや災害防止などの森林機能の発揮に向けて、森林の循環利用を促進してまいります。令和6年度は、市や個人が所有する森林をまとめ、一体で施業するために必要な林業専用道等の工事に着手します。
ブルーカーボンの取り組みも進めていきます。
大島干潟を拠点に市内全域で、ブルーカーボン生態系の創出・拡大を実施することで、生物多様性に富む豊かな海づくりを推進し、地域活性化や水産振興を含めたブルーエコノミーの実現を図ります。
次に、周南コンビナートとの連携です。
産業競争力の維持・強化と脱炭素化の両立は、本市の最重要課題の1つです。
昨年策定した「周南カーボンニュートラルコンビナート構想」及びロードマップの下、企業、アカデミア、地域、行政が一体となり、カーボンニュートラルコンビナートの実現に向けて引き続き取り組んでまいります。
こうした各企業の取り組みをより一層促進するため、令和5年12月に改正した周南市企業立地促進条例により、製造業におけるカーボンニュートラル実現に向けた設備投資を支援してまいります。
また、周南コンビナートを支える徳山下松港は、石炭や急増するバイオマスを取り扱いながら、具体的な検討が進むアンモニア供給拠点化など、新たなエネルギー供給拠点港へ進化することが求められています。
カーボンニュートラル社会の実現に向けた段階的かつ切れ間のない港湾整備について、引き続き、国や県への要望を進めてまいります。
2つ目は、「地域産品のブランド力強化プロジェクト」についてです。
オープン10周年を迎える道の駅ソレーネ周南は、駐車場不足や施設の手狭さなどの課題解決のほか、市民の皆さまが楽しく、快適で健康的に過ごせる道の駅パークを目指し、施設の機能や規模、事業スケジュールなどを具体化するリニューアル基本計画の策定に取り組んでまいります。
農業分野においては、担い手の確保や経営の発展に向け、新規就業者を雇用する農業法人に対してスマート機能を備えた、いちご栽培用ハウスや麦用管理機の整備を支援してまいります。
また、若い世代の移住・就農を促進するため、都市圏で開催される就農フェアへの出展や、「おためし農業体験」の受入を積極的に行います。
本市の特産品であるわさびの生産量の拡大に向け、経験や知識が少ない新規就農者でも安定的に生産ができるよう、引き続き、周南公立大学や県と連携し、デジタル技術を活用しながら、本市の気候に合致した最適な生産環境等の確立に取り組んでまいります。
漁業分野においては、種苗放流や産卵用タコツボの増設により水産資源の安定確保を図るほか、新規漁業就業者確保等の支援に取り組み、引き続き資源・人材の両面から水産業の振興を図ってまいります。
3つ目は、「安定した行財政運営プロジェクト」についてです。
令和6年度は「周南市スマートシティ構想」に基づき、多様なデータや先端技術等を活用し、社会基盤の高度化・全体最適化の実現を目指します。
地理空間情報のシステムを構築し、公共施設や避難所等の位置や施設情報など、誰もが目的に応じて、情報の閲覧や取得ができる環境をつくります。
また、和田地区において、平成28年から続いている無医地区を解消するため、新たに郵便局と連携し、オンライン診療を開始します。
市民課等の窓口においては、書かない窓口システムの導入や、オンライン申請サービスの拡充等の窓口DXを推進します。申請書の作成や来庁による負担の軽減等、利便性や満足度が高い行政サービスの実現に向けて取り組んでまいります。
その他、スマートシティの推進に係るモデル地区においてアプリケーションの実証等を行うとともに、課題解決に資する様々な分野のDXを進めてまいります。
これらの取り組みを通し、本市の未来に向けて、デジタル技術を活用した「まちの進化」に取り組んでまいります。
建替え中の新南陽及び鹿野総合支所は、令和6年度中に供用を開始し、防災の要として市民の安心安全の確保を図り、市民サービスの充実に努めてまいります。また、その他の公共施設につきましても、引き続き適正な維持管理に努めてまいります。
最後に、その他として重要な施策について申し上げます。
本市のまちづくりの羅針盤である「第2次周南市まちづくり総合計画」は令和6年度で期間終了となります。そのため、次なる「第3次周南市まちづくり総合計画」の策定に取り組んでまいります。
新南陽市民病院の増改築につきましては、これまでの課題を解消するとともに、本市の医療の現状や動向等に合わせた持続可能な医療を提供するため、基本計画の策定業務に着手してまいります。
社会情勢の変化に伴い、いじめや虐待、ネット上での名誉棄損やプライバシーの侵害、LGBTQ等に関する差別的な扱いなど、人権侵害の内容は複雑多様なものになっています。
今後も引き続き「市民一人ひとりの人権が尊重されるまち」の実現を目指し、市民の人権意識を高める人権教育・啓発をより一層進めてまいります。
最近、産業界や霞が関でよく耳にする言葉に「ゆでガエル」があります。この「ゆでガエル」とは「ゆでガエル理論」とか「ゆでガエルの法則」「ゆでガエル症候群」といわれるもので、危機が迫っているにもかかわらず環境の変化の速度がゆっくり進むために気づくことができず、気づいた時にはもはや手遅れになっているという、危機の認識と対応の大切さを説いたものです。
また、時代の要請としてやらなければならないことが山積しているにもかかわらず、「実行に移そうとしない態度や姿勢」を指す言葉としても使われています。
2050年は確かに26年も先のことですが、今の子ども達が大人になり、地域をしっかりと担っているであろう、すぐ先のことでもあります。
現在、人口減少が加速的に進み、影響が目視できることを思えば、これからの26年間、私たちが何を考え如何に行動すべきかが見えてくると思います。
令和6年度の市政運営では危機の現実を直視し、全職員が心をひとつにして、「ゆでガエルにならない」「ゆでガエルだけにはさせない」という強い決意のもとで、諸施策の展開に取り組んでまいりたいと考えます。
私は、行政は常に現在を直視し、未来を見つめたものでなければならないと思っています。未来が生まれるまちは、「戦略の転換点」を逃さないことから始まるとも考えています。
市民の皆さまに寄り添い、「品格と誇りのある住みたくなるまち、未来が生まれるまち」をめざして、分かりやすい市政の実現に、令和6年度も誠実に取り組んでまいります。
市民並びに議員の皆さまのご理解をお願い申し上げます。
令和6年2月20日
周南市長 藤井 律子