ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ

令和5年度施政方針

印刷用ページを表示する更新日:2023年2月21日更新 <外部リンク>

はじめに

 

施政方針

本日ここに、令和5年度予算案をはじめ、関係諸議案のご審議をお願いする市議会の開会にあたり、私の市政運営に臨む所信を申し上げ、議員並びに市民の皆様のご理解とご賛同を賜りたいと存じます。

私は令和元年5月25日に周南市長に就任し、4度目の施政方針となりました。

遡れば、就任直後の所信表明では「分かり合える市政の実現を目指すこと」を、2年目は人口減少にも触れ、施策の「手法や展開のあり方を思い切って見直す」ことを申し上げ、3年目には新型コロナウイルス対策を主に「市民の生命と暮らしを守ること」、少子高齢化や人口減少、公共施設やインフラの老朽化など「待ったなし」の課題に全庁あげて取り組むことを、そして昨年は「2050年を乗り越えられる周南市になる」をパーパスに掲げ施策展開の心がけとすること、「Z世代をはじめ幅広い世代とのコミュニケーション」の必要性などを申し上げました。

私はこれまで一貫して「市民に寄り添い、市民の声を聞き、市民と分かり合える市政」を心がけ、「品格と誇りのある、住みたくなるまち、未来が生まれるまち」を目指してまいりました。

その過程で、本市の抱える「最大の課題が人口減少」であること、高度経済成長期に集中的に整えられた施設は老朽化が進み、もはや「先送りできない」こと、市民の行政への期待が「生命や身体の安心安全の領域」に具体的に及んでいること、世代を問わず「まちの発展と持続可能性を同時に叶えて未来につなげること」への希望が極めて高いことを、様々な機会で実感してまいりました。

市民の暮らしに寄り添う基礎自治体は、市民を取り巻く環境の変化には誰よりも敏感でなければなりません。

世界は今、地球の限界に警鐘を鳴らし、持続するための行動を始めています。

企業は、市場の獲得競争に質的な変化を察知し、如何に地球環境や社会の持続に貢献して生き残るかを競う時代になりました。

市民生活では、少子高齢化や人口減少による影響、新型コロナウイルスとの戦い、デジタルが浸透した暮らしなど、数年前までは予想だにしなかった急激な変化が起きています。

私は、こうした状況で本市最大の課題である人口減少問題へ取り組む姿勢として、現代社会を形成する基本的なファクターである行政と企業と市民というトライアングルの関係を、「相互信頼」という視点で再考したいと考えています。

この三者に求められるものは、行政には、あらゆる施策において人口減少問題との関係性を問い、関連する他部署の施策との調整を図り、その展開においては「施策の束」として真の実効性を追求すること、また、情報を共有し、デジタルの有益性・利便性を積極的に取り入れていく姿勢です。

企業には、脱炭素やSDGsの推進を企業活動の必須として織り込み、地域経済の活性化、地域の雇用、地域の教育・安心安全に貢献し、地域文化に寄与することが、市民には、持続可能な地域づくりに「わが事」として参画し、地域の担い手として様々な役割を果たし地域の文化を支え、様々な問題を主体的に判断することがあげられます。

私は、この三者のバランスが、何かの要因で均衡が崩れたとき、社会的な不安や問題が発生すると考えています。

人口減少問題も、例外ではありません。

そこで、三者の関係をより強力に結びつけることが必要となります。

それは、それぞれが自らの存在意義を果たしつつ、率直に評価し、信頼し合う関係を築いていくことだと思います。

そして、この「信頼のトライアングル」は、「知の力」が備わることにより、より強固なものになると考えています。それはまさしく、周南公立大学の存在意義に即するものだと思います。

私は全ての施策は人口減少対策に結びつくと考えており、今後は「信頼のトライアングル」の形成を念頭に、人口減少問題に立ち向かってまいりたいと決意いたしました。

それでは、令和5年度の取組について、「第2次周南市まちづくり総合計画後期基本計画」を構成する、3つのまちづくりの基本的な視点に従って、順次ご説明させていただきます。

市民に寄り添う~ひとづくり・暮らしづくり~

1つ目の基本的な視点「市民に寄り添う~ひとづくり・暮らしづくり~」について申し上げます。

今日の本市最大の課題である人口減少問題に直結する子ども関連施策につきましては、令和3年4月にこども局を創設して「子ども・子育て支援」に積極的に取り組んでまいりました。

国においても、本年4月に「こども家庭庁」を創設し、こどもまんなか社会の実現に向け、こども政策を強力に推進していくこととされており、本市におきましても、地域の特性や実情に即したより高い実効性を目指してまいります。そのためにも「施策の束」として関係部署が深く連携し、子どもの成長と子育て家庭に寄り添った施策展開を心がけます。

また、市民の命と暮らしを守るという崇高な使命感のもとで、防災対策や野犬対策などに、より一層注力してまいります。

それでは、この視点に基づく4つのプロジェクトについて、順次申し上げます。

みんなで子育て応援プロジェクト

1つ目は、「みんなで子育て応援プロジェクト」についてです。

本市では、子育て世代が安心して暮らせる環境を整備するため、様々な施策に取り組んでいるところであり、令和5年度は低年齢の子どもを持つ家庭や多子世帯、多胎児家庭への支援を強化することで、少子化対策につなげていきます。

まず、多子世帯への支援策として、新たに第3子以降の保育料を完全無償化します。

また、多胎児家庭等には、保護者の育児負担を軽減するため、新たに医療機関での日帰りショートステイを開始し、産後の家事・育児支援サービスも全て無償で利用できるよう制度の拡充を図ります。

そのほか、未就園児を養育する家庭の支援として、保育所等で実施する一時預かり事業の利用料を軽減します。

また、これまで公立保育所と認定こども園で、持ち帰りとしていた使用済み紙オムツを園で回収・処分し、保護者の負担の軽減を図ります。私立保育園に対しては、必要な備品購入等にかかる経費を支援します。

 

さらに、お子さんの発達に関する保護者の不安を軽減するため、小児科医療機関による専門的な相談支援機能の強化を図ります。 

妊婦さんや低年齢のお子さんをお持ちの全てのご家庭に対して、安心して子育てができるように保健師等の専門職が相談に応じ、必要な支援につなぐ伴走型の相談支援体制の整備と育児物品購入等の経済的支援を一体的に実施することで、子育て家庭を包括的に支援します。

また、必要に応じて産後ケアや産前・産後サポート事業等が利用しやすいよう、利用料を無償化します。

 

子どもの医療費につきましては、所得制限を撤廃し、中学生までの医療費を完全無料化いたします。

 

輝く子ども育成プロジェクト

2つ目は、「輝く子ども育成プロジェクト」についてです。

部活動の地域移行を推進するため、体育協会等の関係団体と緊密に連携し、地域移行に向けた新たな仕組みづくりを検討してまいります。

また、児童生徒の情報活用能力の育成を図るため、GIGAスクール構想に基づき、小中学校のICT環境の充実、整備を図るほか、学校施設の改修に計画的に取り組み、安心安全で快適な教育環境づくりを進めます。

児童生徒を取り巻く様々な課題の解決を図るため、引き続き、本市独自にスクール・ソーシャル・ワーカーを配置するとともに、学校における働き方改革の推進に向け、教員業務支援員の配置を継続して行います。

子どもたちが安心安全に通学できるよう、横断歩道のカラー化や防護柵の設置など、通学路の整備を重点的に進めてまいります。

子どもの希望する進路を叶えるため、学習・生活支援事業の対象を、中学3年生から中学校全学年に拡充し、より早い段階からの支援に取り組みます。

富田西地区では、今後、児童数の増加が見込まれ、児童クラブの場所の確保が必要となることから、小学校のランチルームを改修し、新たなニーズにも対応できる体制を整備します。

また、大田原自然の家は、休校中の中須中学校を改修の上、移転する計画としており、今後、移転を進めていくための事前調査を行ってまいります。

市民を守る防災・減災プロジェクト

3つ目は、「市民を守る防災・減災プロジェクト」についてです。

激甚化、頻発化が懸念される自然災害等から市民の命を守るため、災害に備えた計画的なインフラ整備など、国や県、関係機関等と連携し、災害に強いまちづくりを進めてまいります。

まず、災害時における「逃げ遅れゼロ」を実現するため、各地区の避難行動支援事業への取組を促進し、避難行動が自発的に行われるための体制づくりを推進するとともに、関係機関と協力して、避難行動要支援者の個別避難計画作成等の対策に取り組みます。

また、避難所となる市民センター等へ、計画的にFCV・EVを活用した給電設備の整備を行い、停電時の非常用電源の確保を図るほか、防災ラジオにつきましても、引き続き、普及啓発に努めてまいります。

大規模地震等の発生への備えとして、地盤災害の防止を図るため、大規模盛土造成地における変動予測調査の全体事業量の検証と調査期間及び実施手法を検討してまいります。

また、浸水被害から市民を守るため、市が管理する準用河川の改修や浚渫についても、計画的に進めてまいります。

安心安全実感プロジェクト

4つ目は、「安心安全実感プロジェクト」についてです。

野犬対策につきましては、県、警察との連携の下、草刈の継続に加え、大型捕獲檻の増台などによる捕獲強化や、監視カメラの増設によるむやみなエサやりの禁止対策の強化など、効果的な対策を推進します。

消防力の充実を図るため、新しい指令庁舎を建設するとともに、老朽化した消防車両、救急自動車や、消防団の機械器具について、計画的に更新整備してまいります。

また、熊毛地区の光地区消防組合中央消防署北出張所について、庁舎の建替えを光地区消防組合と連携して進めてまいります。

空き家につきましては、補助金を活用した危険空き家の解体やリフォーム支援による利活用を推進するとともに、専門家との包括連携による流通等の支援を行うなど、引き続き「未来に繋がる空き家対策」を進めてまいります。

また、地域共生社会の実現に向けて、複雑化・複合化した支援ニーズに対応するため、高齢者や障害者、子どもや生活困窮者など、分野や属性を問わず、多機関が協働した包括的な支援体制の構築にしっかりと取り組みます。

高齢者の外出を支援するため、令和3年10月から取り組んでいる高齢者へのバス・タクシーの運賃助成を令和5年度も引き続き実施します。

2 シビックプライドを育む~まちづくり~

次に、2つ目の基本的な視点「シビックプライドを育む~まちづくり~」について申し上げます。

近年、市民の皆様の会話の中で「まちの品格と誇り」が日常的に使われるようになりました。周南公立大学の開学はまちを見直し、未来のまちを考える大きな契機ともなりました。「大学を生かしたまちづくり」を加速させ、新たな時代に向けて都市の魅力を向上させ、中山間地域の振興と暮らしやすさを追求し、好感度を高めるシティプロモーションの充実に努め、「品格と誇りのあるまち」を目指してまいります。

それでは、この視点に基づく3つのプロジェクトについて、順次申し上げます。

住みたい・訪れたいまち創造プロジェクト

1つ目は、「住みたい・訪れたいまち創造プロジェクト」についてです。

キャッチコピー「ここから、こころつながる。周南市」のもと、関係人口の輪を広げ、シビックプライドを育む施策を展開しているところです。

令和5年度は、市民・企業・学校等との連携をさらに強化し、関係人口とのつながりを深め、地域課題の解決や移住定住の促進等の取組を進めてまいります。

地域産業の担い手であり、まちの将来を担う若者の定住等を図るため、本市に居住し、中小企業等で働く若者に対して、企業と一緒に奨学金の返還支援を行う制度を創設します。

周南公立大学においては、令和6年春の情報科学科、看護学科、スポーツ健康科学科の設置に向け、新校舎をはじめとする学校施設の整備を着実に進めてまいります。

また、大学が持つ教育研究資源を活用した市との連携講座の開催や、大学のリカレント教育プログラムを受講する市民に対して補助を行うなど、市民の学び直しを積極的に支援いたします。

「日常をときほぐす観光」につきましては、モデル地区として取り組んでいる鹿野地域を含めて、資源の掘り起こしや磨き上げを進め、特設サイト等を通じて地域の魅力を発信します。

鹿野地域においては、令和4年3月に策定した「鹿野地域観光振興プラン」に沿って、清流通りにある水車小屋やキャンプ施設の改修を行うなど、魅力向上に努めてまいります。

湯野地域においては、令和4年11月に地域へ譲渡した旧国民宿舎湯野荘の改修及び整備に係る費用への助成を行います。

学び・交流プラザにおいては、交流アリーナの空調設備を整備することにより、利用者の安全性と利便性を高め、災害時における避難所としての機能の向上も図ります。

周南緑地では、いよいよ4月からPFI事業がスタートします。周南緑地はスポーツ・レクリエーションの拠点等であるとともに、本市のシンボルとなる公園でもあることから、民間事業者等と連携して、魅力向上や快適・安心・安全な環境づくりを進めてまいります。

各地区のコミュニティにおいては、複雑多様化する地域課題への対応や、地域づくり活動の充実に向けた主体的な取組が求められています。

新南陽富田地区においては、地域づくりを支援する体制を強化するため、新南陽総合支所に新たに専任職員を配置し、他地区においても引き続き「地域の夢プラン」の策定や実現の支援を行い、住民主体の地域づくり活動を推進します。

道の駅ソレーネ周南は、「防災道の駅」の選定を受け、令和4年10月には、国に対し、多様な活用を図るための駐車場再編整備について要望を行いました。

令和5年度は、要望の早期実現に向け、引き続き国に対する働きかけを行うとともに、国の動向を踏まえながら、地方創生を加速する拠点への進化を目指し、具体的な検討に着手します。

動物園については、「徳山動物園リニューアル基本計画」に基づき、次の計画段階となる、管理ゾーンの造成や建築工事、南園エントランスのSL改修を実施し、北園ではオオカミ・オオワシ舎建設工事に取り組んでまいります。

暮らしやすいコンパクトなまちづくり推進プロジェクト

2つ目は、「暮らしやすいコンパクトなまちづくり推進プロジェクト」についてです。

広域都市拠点として位置付ける徳山駅周辺では、質の高い生活サービス等を提供しながら、賑わいと活力を創出します。

徳山駅前地区市街地再開発事業については、令和5年度に全ての建物が完成し、商業・サービス機能の充実、街なか居住者の増加、新たな雇用の創出など、中心市街地活性化に資する様々な効果が生まれることが期待されます。 

市では、この再開発事業の支援をはじめ、市道リニューアルなどを行い、引き続き、中心市街地の魅力向上に努めるとともに、徳山駅前賑わい交流施設にまちなか共創センターを設置し、周南公立大学等と連携してまちの賑わい創出に取り組みます。

また、徳山駅周辺の公共施設を対象に民間事業者のノウハウや創意工夫を活用した一体的な維持管理を行うことで、良質な景観形成や憩いと賑わいのある空間の創出に取り組んでまいります。

新南陽地域の道路整備につきましては、「周南市国土強靭化地域計画」に基づき、中開作線・野村一丁目7号線の工事を引き続き行うとともに、富田地区の生活インフラとして重要な幹線である中溝線について、着実に整備を進めてまいります。

区画整理事業については、久米中央地区において清算業務を開始したところであり、富田西部第一地区についても、令和6年度末の事業完了に向け、手続きを進めてまいります。

持続可能な中山間地域づくりプロジェクト

3つ目は、「持続可能な中山間地域づくりプロジェクト」についてです。

中山間地域においては、人口減少や少子高齢化が急速に進行していることから、地域の皆様や関係人口をはじめとした多様な主体の力を結集し、いつまでも安心して暮らし続けることができる地域の実現を目指してまいります。

令和5年度は、鹿野地区に地域おこし協力隊を配置し、地域の主体的な取組が将来にわたって持続可能なものとなるよう支援するとともに、担い手となる移住者の受け入れを促進するため、地域等と連携して受入体制の強化に取り組んでまいります。

市北部地域の診療体制については、新たに就任した医師や関係機関と連携しながら、効率的で安心できる医療体制の再構築について検討を進めてまいります。

また、(仮称)徳山北部拠点施設については、令和8年度の供用開始に向け、整備用地の造成測量設計や建物の基本実施設計業務などに取り組んでまいります。

農業の生産性向上や省力化を図るため、ほ場整備について、引き続き長穂地区や中郷地区において進めるほか、新たに鹿野地区の4箇所において、事業実施に向けた準備作業に着手してまいります。

周南の強みを活かす~産業づくり・行財政基盤づくり~

次に、3つ目の基本的な視点「周南の強みを活かす~産業づくり・行財政基盤づくり~」について申し上げます。

世界の潮流である脱炭素やSDGsを市民の皆様と企業・事業所と連携して推進してまいります。徳山下松港と周南コンビナートは、地域の産業と雇用を支え、地域の持続可能な発展にはなくてはならない存在です。国や県、学術機関と密に研究や情報交換を図り、あらゆる力と知恵を結集して、脱炭素の進むまちと評価が得られるよう努めます。

また、デジタルによる利便性、それを支える職員のデジタルリテラシーの向上を図り、安定した行財政のもとで新しい時代への実践力を高めてまいります。

それでは、この視点に基づく3つのプロジェクトについて、順次申し上げます。

地域経済を支える産業力強化プロジェクト

1つ目は、「地域経済を支える産業力強化プロジェクト」についてです。

国内外において脱炭素化に向けた動きが加速する中、2050年カーボンニュートラル社会の実現に向けた取組が求められています。

本市では、令和4年2月に「周南市脱炭素社会形成取組指針」を策定しており、公共施設等における太陽光発電やLED照明の導入を推進するとともに、電気自動車等の導入費に対する補助制度の継続、市有施設の省エネ診断、各種普及啓発事業などを実施してまいります。

また、バイオマス材の需要が高まる中、須々万地区緑山の市有林においてバイオマス材の生産に特化した早生樹の植林を継続するとともに、戸田地区向嶽の市有林において企業等との共同植林実証を進めるなど、関係機関等と連携しながら継続的な生産や効率的な利活用に向けた検討を推進してまいります。

大島干潟をはじめとした徳山下松港におけるブルーカーボン生態系について、調査研究を進め、保全活動を通じて豊かな海を守るとともに環境と調和のとれた持続可能なブルーエコノミーを進め、水産振興と地域活性化へつなげてまいります。

また、令和4年1月に設立した「周南コンビナート脱炭素推進協議会」において、産官学・地域の連携による周南コンビナートの脱炭素化について、国や県等の施策とも整合を図りながら、2050年に向けたグランドデザインの策定を進めているところです。

令和4年8月には、協議会と構成企業4社の連携事業として、周南地区における国内初のアンモニアサプライチェーンの構築に向けた取組が、全国で唯一、国の補助事業に採択されました。

この事業は、2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、大きな一歩となる重要な取組であり、今後も、本市が旗振り役となって、コンビナート企業、化学工学会、国、県としっかりと連携し、実証、実装に向けた取組を全国に先駆けて進めてまいります。

徳山下松港は、新たなエネルギーの供給拠点港湾としての役割も担うために、国・県・関連企業と連携し、カーボンニュートラルポートの形成に向けた取組を進めています。現在、国が進めておられる港湾整備事業の早期完成と併せ、各種港湾施設の機能高度化が図られるよう、国や県に対し、積極的な要望を継続してまいります。

また、市内各事業所では、円安や原材料価格の高騰という厳しい状況においても、更なる競争力強化や2050年を見据えた新たな取組が始まっており、市としては、引き続き、補助制度を活用して設備投資を支援し、地域経済の持続的な発展につなげてまいります。

地域産品のブランド力強化プロジェクト

2つ目は、「地域産品のブランド力強化プロジェクト」についてです。

漁業就業者や農業従事者の減少や高齢化が急速に進行する中、本市においても今後の水産業・農業を支える担い手の確保が喫緊の課題となっています。

そのため、漁業においては、新規漁業就業者の確保等の支援に引き続き取り組むほか、水産資源の安定確保を目指し、産卵用タコツボの設置数を倍増するとともに、引き続き種苗放流を行ってまいります。

農業においては、地域農業の持続・発展や定住による地域活力の強化に向けて、新規就農者の確保・定着を図るとともに、省力化や効率化を図るためのスマート農業を推進します。

また、新規就業者を雇用する農業法人に対して、国の制度を活用して施設等の整備を支援します。

これまで市が行ってきたわさびのバイオ苗の生産・供給については、民間委託に切り替え、わさび苗等の生産者の育成やICT活用による生産環境と体制の整備に取り組むことにより、「わさびの産地化」をより一層推進してまいります。

また、道の駅ソレーネ周南を核に、直売所や量販店、飲食店などと連携し、「しゅうなんブランド」認定品をはじめとした本市ならではの個性や魅力を持った地域産品の認知度の向上や消費の拡大を図ります。

安定した行財政運営プロジェクト

3つ目は、「安定した行財政運営プロジェクト」についてです。

令和5年度は、「周南市スマートシティ構想」に基づき、モデル地区事業やスマート市役所を目指した取組の実施等により、様々な分野のDX化を進めてまいります。

学校施設等の公共施設の予約や粗大ごみ収集の受付等についてDX化を進めるほか、オンライン申請サービスの推進や地理情報システムの構築を図り、デジタル技術を活用した便利で暮らしやすい社会の実現に取り組んでまいります。

新南陽及び鹿野総合支所の建替えにつきましては、両総合支所とも、令和6年度中の完成を目指し、令和5年度より新庁舎の建設を開始します。

職員の人材育成にも力を入れて取り組みます。知の拠点である周南公立大学と連携した、若手職員対象の新たな研修を実施することで、組織力の強化を図ります。

その他の重要な施策

最後に、その他として重要な施策について申し上げます。

コロナ禍に関連した人権問題をはじめ、ネット上での誹謗中傷やLGBTQ等、ジェンダーに関する差別的な扱いなど、様々な人権問題が存在していることから、今後も引き続き「市民一人ひとりの人権が尊重されるまち」の実現を目指し、総合的かつ効果的な人権教育・啓発に取り組んでまいります。

私は、市長就任以来、市民の皆様の声を市政に生かすよう努めてまいりました。令和5年度も、引き続き、市民の皆様一人ひとりに寄り添い、分かり合える市政の実現を目指してまいります。

 来たる令和5年4月21日、周南市は誕生して20年の節目を迎えます。

本市の礎を築いていただいた先人の皆様はもとより、地域においてご尽力をいただいている皆様に改めて深く感謝を申し上げます。

本年は、周南市誕生20周年記念事業を行います。市民の皆様が、希望あふれる新たな時代に向け大きな一歩を踏み出すことができるよう周南市の魅力を市内外に発信してまいります。

おわりに

様々な世界の経済統計のなかで、日本の国際的地位の低下が指摘されています。

昨年来の円安により、外国人労働者の離日が増えていることも報道されています。ところが、日本に留まる多くの人たちは、財布を失くしても交番に届いている、夜も一人歩きができる、自動販売機が壊されないなどという日本の治安の良さ、あるいは穏健で礼儀正しくルールを守る、正直で優しく思いやりがあるという国民性に惹かれ、

「日本にはお金だけではない素晴らしさがあるから離れない」と、話しているといいます。

私は、なるほどと思いつつ、この話は私たちのまちを考えるときにも通じるものがあると感じました。

昨年末、初誕生の祝をするために親子3人で帰省されたご両親から、「長男は帰省の当日からウィルス性胃腸炎にかかり発熱しました。夜になっても下がらないため休日・夜間こども急病センターに駆け込みました。どんな時にも直ぐにしっかり診ていただける環境が整っていることに感動しました。親として子どもの病気ほど心配なことはありません。私の故郷ながら素晴らしい子育て環境があり自慢したいです。」というお話をいただきました。

よく、子育て環境やまちの暮らしやすさが話題になりますが、救急医療体制がすぐ身近で充実しているという満足度などは数値化が難しく、データの指標としても取り上げにくい面があります。

本市には夜間・休日の救急医療の他にも、多くの医療機関があり、命や病気に対する安心感は何よりの暮らしやすさ、子育て環境だと思います。

 

私はもっと私たちのまちに自信を持って「自分たちのまち」を考えるべきだと気づきました。

国際拠点港湾の徳山下松港、県内屈指の工業出荷額を誇る石油コンビナートをはじめとする企業群、首都直結の新幹線駅や九州と結ぶ港、4つのインターチェンジなどの交通の利便性、多彩な6つの高校と国立高専、「知の拠点」周南公立大学を有す教育環境の充実さ、街路樹が繁り整備された市街地、美術博物館、文化会館、動物園などを有する文化の薫るゾーン、豊かな自然環境に培われた文化と歴史が残る、広大な中山間地域や周辺市街地など、私たちのまちへの自信は、枚挙にいとまがありません。

今後は、有形なものだけでなく、「安心や満足がある」「このまちに住む幸せや誇り」など、数値では表しきれない価値をしっかり認識して、まちをさらに磨き上げ、足りないものを足して、改めて「品格と誇りのある、住みたくなる、未来が生まれるまちづくり」に、努めてまいりたいと思います。

私はこの「形のない価値」は、少子化対策、人口定住にとても大きな力となるものと確信しています。

本市は「2050年を乗り越えられる周南市になる」を心がけて進んでいます。

この流れを確実にするためには、私たちのまちを、今一度調査分析し、「数値に置き換えられない価値」も積極的に追求する、「投資」という考え方がますます必要になってくると思います。

「これまで」にとらわれることなく、地域の経済から医療福祉、教育文化などすべての分野で、戦略的投資の時代が来ていると考えます。

市民の皆様、市議会議員の皆様のご賢察を賜りますよう、ご理解とご支援の程、心からお願い申し上げます。

令和5年2月21日
周南市長 藤井 律子

令和5年度施政方針 [PDFファイル/844KB]

施政方針用語解説 [PDFファイル/750KB]

Adobe Reader<外部リンク>

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe社が提供するAdobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。(無料)