本日ここに、令和7年度当初予算案をはじめ、関係諸議案のご審議をお願いする市議会の開会に当たり、私の市政運営に臨む所信を申し上げ、市民並びに議員の皆さまのご理解とご賛同を賜りたいと思います。
まず時代認識から申し上げます。
現代は、あらゆるものを取り巻く環境が複雑で曖昧さを増し、想定外のことが頻発し、将来の予測が困難な「不確実性の時代」といわれています。
これは、気候変動、ICTの浸透、人口減少、消費趣向や人々の価値観の変化など様々な要因の複雑な絡みを背景としております。また、世界各地での戦争や紛争・対立なども遠く離れた日本の一地方の経済にも大きな影響を与えているところです。
今世紀に入りこの流れは一層顕著となっており、これは特定の時代や分野において支配的な規範となる「物の見方や捉え方」であるパラダイムの急激なシフト(変化)によるものと考えられます。
わが国ではパラダイムは移りゆくものという認識が低く、世界経済の多極化、脱炭素の流れ、AIの浸透などのシフトにやや疎さがありました。
私たちはこれを、予測不可能、不透明な時代などと表現して語りつつも、本質を正面から受け止めることを避けてきたところがありました。
本市はこれからの市政において、あらゆる場面でパラダイムシフトを見据え、現在のみならず未来に向けて最適な施策展開を行うよう心掛けてまいりたいと考えます。
次に、施政に臨む姿勢について申し上げます。
私は周南市政として「これだけはゆるがせない、これを外したら周南市でなくなる」というものを、まちづくりの哲学として持つことが何より必要だと思います。
では、周南市のまちづくりの哲学は何かということになりますが、折しも令和7年度から始まる「第3次周南市まちづくり総合計画」に、その大本を求めたいと考えています。
この計画では体系を「まちの強み進化戦略」と、「市民生活を支える基盤強化」の2本立てとしています。また、複数の施策を連携させ、より戦略的に進めていくため、共通の目的や使命をもつものを「施策の束」として捉えております。
計画の主意として、現世代と将来世代の幸せを慮ること、「進化」についても強いものが勝ち残るということではなく、環境に適応するものが生き残ることを認識して、直面する環境に適応し、自らが変わることで「進化」を成し遂げていくとしています。
さらに、生き残るための戦略も、それ自体を常に進化させなければならないと認識した上で、地域のもつ「強み」を戦略的に向上させることを掲げています。そして、「強み」を「さらに進化させるもの」「育むもの」「種をまくもの」の3段階に分類し、それぞれに最適な手法を講じていくとしています。
こうした考えは、すべてパラダイムシフトへの認識に基づいています。それは、
基本理念を「 将来世代へ責任あるまちづくり 」とし、
まちの将来像を「 未来を歩む生命力満ちるまち 」としていることからも明らかです。
また、計画のサブタイトルを「 約束 このまちの未来と 」とすることで、未来のまちの姿や将来世代の幸福を慮ることが「約束」であること、それは、私たち現世代から将来世代への「誠実」を誓うものとなっています。
こうしたことから、「第3次まちづくり総合計画」に流れる精神は、これからのまちづくりの哲学となり、芯を通すに十分な資質と重みがあるものと考えます。
新年度からこの計画を基に施策展開を行うことになりますが、「周南市のまちづくりには哲学がある」と評価していただける日がくるよう、職員一同、新たな気概をもって努めてまいりたいと思います。
それでは、令和7年度の取組について、ご説明いたします。
まず、体系の一つ目の柱である、「まちの強み進化戦略」についてです。まちの将来像へ向けて施策効果を高めるために、本市の持つ能力や機能、技術など諸々(もろもろ)の分野で培ってきた力を「強み」として捉え、「進化させる」「育む」「種をまく」の3つに分類しました。パラダイムシフトを前提にこれらを進化させることを施策の芯として組み込み、「強み」そのものを次のステージへ戦略的に引き上げてまいります。
「まちの強み進化戦略」のうち、まずは、まちの強みを「進化させる」戦略についてです。本市の群を抜く強みとして、脱炭素、地域生産力、子育て施策などを取り上げ、さらなる進化を図る取組を展開してまいります。
1つ目は、「脱炭素のまちづくりを推進する施策の束」についてです。
温室効果ガスを要因とする地球温暖化対策として、地球規模でのカーボンニュートラルの実現が求められております。CO2排出量が多いとされる化学産業が集積した周南コンビナートを有する本市は、産業競争力の維持発展の観点からもカーボンニュートラルの実現に向け、積極的に取り組む責任があります。
「周南コンビナート脱炭素推進協議会」では、令和5年に策定した「周南カーボンニュートラルコンビナート構想」の実現に向けて議論を進め、課題の精査や新たな技術の導入等、様々な検討を重ねているところです。
産学官の連携による取組の更なる推進を図るとともに、国の動向もしっかりと注視し、引き続き、カーボンニュートラルコンビナートの実現に向けて積極的に挑戦してまいります。
公共施設等へのLED照明の導入などを率先して進めるとともに、市民の皆さまに対しては電気自動車やハイブリット自動車、ZEH(ゼッチ)への補助を通して脱炭素社会の啓発を図ります。
また、ブルーカーボン生態系の創出・拡大に向け、大島干潟に加え、令和6年度から戸田漁港において、漁業者との連携による取組を開始いたしました。これからも市内全域でブルーエコノミーの実現を図ってまいります。
2つ目は、「地域の生産力・外貨獲得力を高める施策の束」についてです。
経済環境の変化に加え、担い手の減少や高齢化が地域の生産力の萎縮につながりつつあります。特に、農林水産業における生産性・収益性の向上、6次産業化の推進や生産基盤の整備などが求められています。
道の駅ソレーネ周南は、昨年12月、レジ通過者が800万人を達成しました。今後ますます多様な役割を担うことが期待されており、令和7年度は「道の駅リニューアル基本計画」に基づき、拡張予定地の測量や地権者との交渉を開始するとともに、国と連携して駐車場の拡張・再編整備を進めてまいります。
農業基盤整備につきましては、長穂(ながほ)地区や中郷地区、鹿野地区のほ場整備を計画的に進め、営農の省力化により持続可能な農業を目指します。今後も、地域農業の担い手への農地の集積・集約等を国や県の補助を活用しながら進めてまいります。
鳥獣による農林水産業等への被害の防止対策につきましては、県や猟友会などと連携して、クマによる被害防止対策を強化し、須々万地区において、ICTを活用したサルの群れによる被害防止に取り組みます。
また、物価高騰などにより捕獲活動経費の負担が増える中、捕獲従事者の皆さまに継続的に活動していただけるよう、イノシシの捕獲報償金を増額します。
木質バイオマス材の生産モデル事業につきましては、引き続き、成長に優れた早生樹の植林等を進め、効率化と低コスト化の実証を重ねてまいります。
また、民有林施業促進事業として、木材生産に適した森林を選定し、市や個人が所有する森林を面的にまとめて施業の効率化を図り、森林資源の適正管理や循環利用を進めてまいります。
3つ目は、「こどもまんなか社会を実現する施策の束」についてです。
本市では、令和5年に「周南市こどもまんなか宣言」を掲げ、地域の宝であるこどもの最善の利益を第一に考え、こどもに関する取組を地域の真ん中に据えたまちづくりを推進しています。
結婚、妊娠・出産、子育てに関する支援のほか、若者を中心とした定住促進など、多様な施策を展開する中、昨今では、子育てを理解し応援する地域風土そのものの重要性が指摘されるようになりました。
こどもを生み育てたくなる風土の醸成は、こどもまんなか社会の実現になくてはならないものであり、各施策を着実に進めてまいります。
まず、こども施策の総合計画として、「周南市こども計画」を本年4月から施行いたします。「すべてのこどもが夢と希望をもって未来をつくる こどもまんなかしゅうなん」を基本理念に掲げ、こども施策を計画的に実施してまいります。
また、未来にわたり安心できる子育て環境を確保するため、第二保育園の建て替え、北部拠点施設に併設する認定こども園の整備を進めます。
さらに、多様なこどもの居場所づくりを推進するため、新たに児童育成支援拠点の設置及び地域で学習や体験の機会の提供等を行う活動への補助を新設し、見守り体制の強化に取り組みます。
進行する未婚化・晩婚化及び少子化対策の一環として、若い世代が、結婚、妊娠・出産、子育て、仕事を含めた将来像を描き、希望を実現できるよう、新たにライフデザイン支援を推進します。
児童クラブが未設置の小学校区においては、近隣のクラブへ送迎を行うなど利用環境を整えるとともに、待機が発生しているクラブについては、教室の増設に取り組み、解消を図ります。
今日では、子育て家庭への支援は様々なニーズに即したものが求められています。こども誰でも通園制度については、令和8年度からの本格実施に向けて試行し、受入体制の整備を図っていきます。
「こども家庭センター」では、引き続き、妊産婦や子育て家庭、18歳までのこどもに関する総合相談や支援の窓口として、こどもとその家庭の不安や悩みに寄り添い、切れ目のない継続的な支援を実施してまいります。
また、子育て支援情報に関連する市ウェブサイトをリニューアルし、情報発信の強化に取り組んでまいります。
次に、まちの強みを「育む」戦略についてです。企業力、雇用力、デジタル力、教育力などを取り上げ、各分野の知見・認識を深め、現況の把握と将来展望に基づく戦略的かつ最適な施策展開を大胆に行うことで、真の強みにステージアップするよう努めてまいります。
そのうちの1つ目、「企業の変革・創業・立地を促す施策の束」についてです。
企業を取り巻く厳しい環境への対処として、産業基盤の強化や雇用の確保、新たな産業の創出に努めてまいります。地域経済の屋台骨である製造業のさらなる発展に寄与するため、カーボンニュートラルに向けた次世代エネルギーへの転換や新技術の導入等の支援を行います。また、雇用の創出や企業誘致に向けた取組を積極的に展開してまいります。
徳山下松港は、高い水準にある石炭需要だけでなく、再生可能エネルギーとしてのバイオマスや検討が進むアンモニアなど、多角的エネルギー供給拠点港湾を進化の方向としています。現行整備事業の早期完成を促し、カーボンニュートラルポートに向けた整備について、国や県への要望を進めてまいります。
また、周南コンビナート企業をはじめとした各事業所に対し、設備投資や雇用を支援する事業所等設置奨励金を用意し、さらなる地域経済の活性化と企業の立地の促進を図ってまいります。
2つ目は、「人材を育成し雇用力の向上を図る施策の束」についてです。
生産年齢人口の減少に伴い、労働力の絶対数が不足し、地域経済へ大きな影響を与えています。そのため、人材の育成や確保の重要性は高く、事業者と一体となって取り組む実効性のある施策を展開してまいります。
地域の担い手となる若者の奨学金返還につきましては、若者の経済的な不安を和らげ、市内定住や中小企業等の人材確保につながるよう、制度を拡充し、企業と協力して支援を行ってまいります。
農業、漁業分野の新規就業者の確保に向けても、継続的な経済支援が必要と考えております。農業分野については、新規就業者を雇用する農業法人への支援のほか、周南公立大学や県と連携しデジタル技術を活用した、わさびの栽培環境の確立など、担い手の確保や経営の発展に向けて取り組んでまいります。
漁業分野については、独立後の安定的な操業支援として、種苗放流、産卵用タコツボの増設を継続していくほか、周南たこ、周防はも、徳山ふぐなどのしゅうなんブランドの推進による高付加価値化を図るなど、漁業者所得の安定・向上を目指した取組を推進してまいります。
3つ目は、「情報力・デジタル力を生かす施策の束」についてです。
現代は、経済・社会・生活のあらゆる場面で情報化が進展し、また、AIやIoT等の技術革新も急速に進んでおります。
こうした情報力・デジタル力を積極的に活用することで、経済的発展や社会的課題の解決に役立て、本市の魅力向上を図ってまいります。
「周南市スマートシティ構想」に基づき、社会のあらゆる分野でデジタル技術やデータを活用した、利便性の高い、快適な暮らしの実現を目指します。具体的には、社会基盤の高度化・全体最適化の実現に向け、庁内の多様な地図情報を共有・公開する統合型・市民公開型GISの利活用を進めてまいります。
また、デジタル技術の活用により、窓口での意思疎通に係る課題の解消を目指し、「窓口用音声文字変換タブレット機器」の導入を、実証事業として進めてまいります。
そのほかにも、本年3月から、市役所本庁舎にて、氏名・住所等の情報を複数の申請書に転記するなどの機能を持つ、窓口支援システムの運用を開始し、「書かない窓口」として市民の皆さまの窓口利用の利便性向上を目指します。
広報紙やホームページのほか、LINEをはじめとしたSNSなど、複数の広報媒体を活用し、市政情報を積極的に発信するとともに、幅広い広聴活動に取り組むことにより、市民と行政が相互に理解し合えるまちづくりを推進してまいります。
近年頻発する自然災害に対しては、統合型GISと連携した災害情報システムを整備することにより、様々な情報伝達媒体から避難情報を迅速かつ的確に発令するほか、避難所情報や被害情報などの災害情報をよりわかりやすく市民の皆さまにお知らせし、市民の安全安心を確保してまいります。
消防指令システムを更新整備することで、緊急通報を的確に受理し、市民の生命及び財産を守ります。新たに整備した通信指令庁舎の運用を開始するとともに、令和12年度中に予定している周南地域3消防本部による指令システムの共同運用に向け、消防応援体制の構築を図ってまいります。
4つ目は、「教育力を向上させる施策の束」についてです。
社会状況の如何を問わず、こどもを育む教育環境や生涯学習の環境整備はなくてはならないものです。安全安心に学べる環境をしっかり整えてまいります。
「周南市学校施設等長寿命化計画」を踏まえ、経年劣化に伴う損傷がみられる小・中学校校舎の外壁やトイレの洋式化への改修を計画的に進めてまいります。
児童生徒の1人1台端末の更新を順次進め、ICTや教育データを継続的に利活用できる環境整備に取り組みます。
また、大田原自然の家の移転整備については、令和8年度中のオープンを目指して、移転先としている中須中学校の改修工事を行ってまいります。
強み戦略の3つ目は、まちの強みとなる「種をまく」戦略です。これは、将来まちの強みとなることが期待されるモノゴトを見出し、あるいは新たに種をまき、これから丁寧に根気よく育てていくものです。
ここでは、文化や知の力を風土づくりに生かすことと、ひとの流れをつくり、選ばれるまちとなることの2つを、種をまく段階の強みとして取り上げます。
1つ目は、「文化や知の力を風土づくりに生かす施策の束」についてです。
「文化や知の力」は、このまちに住む幸福感に多大な影響を与えることから、品格と知性の漂うまちづくりを進める上では重要な要素となります。
地域文化を育み、文化風土の醸成に取り組んでまいります。
本年は戦後80年の節目の年となります。徳山空襲を受けてからのまちの復興の歩みをはじめ、戦後のまちづくりを担った先人の想いや功績を次世代へつなぎ、さらには「回天」に関する遺構や資料の紹介などを通じて、広く本市から平和の大切さを発信してまいります。
周南公立大学では、知の力を活用した地域課題の解決やリカレント教育を進め、大学を生かしたまちづくりのさらなる推進を図ります。
周南市文化会館については、長寿命化や施設機能の維持向上を図る中で、利用者の安全安心を確保する観点から、大規模改修工事に着手してまいります。
また、まちなか文化ゾーンの多様な歴史や文化的価値を発信するため、周南市ゆかりの詩人、まど・みちおさんなどをテーマとした文化振興策を展開してまいります。
市民館跡地の利活用につきましては、市民館跡地利活用構想や文化小ホール基本構想・基本計画を踏まえ、国等と連携・調整を図りながら、引き続き取組を進めてまいります。
2つ目は、「ひとの流れをつくり選ばれるまちをつくる施策の束」についてです。
人口減少が進む中で地域の活性化はこれまでの発想を転換させることが求められます。まちの魅力はそのまちが進もうとする内容と本気度にあるとも言われております。
まず、周南公立大学につきましては、2000人に近い若者の塊を形成するまでになりました。市内外から集まる学生が本市のまちや地域、市民に溶け込み、充実した学生生活が送れる「風土づくり」に努めます。
スポーツコンベンションの拠点である周南緑地では、PFI事業によるリニューアル工事が進んでおり、令和7年度は新水泳場の本格工事に着手いたします。
誰もが様々な形でスポーツ活動に親しめる市民スポーツの拠点づくりに取り組んでまいります。
徳山動物園では、いきいきとした動物たちの姿に出会えるよう、リニューアルを進めるとともに、熱中症対策やドリームデイの開催など、快適で誰もが訪れやすい動物園を目指します。
鹿野観光交流拠点施設については、実施設計や旧鹿野総合支所の解体工事に着手し、令和9年度中の供用開始に向けて取り組んでまいります。
また、市内への定住や市外からの移住を促進するため、周南市シティプロモーションスペシャルサイトを全面リニューアルし、市の強みや暮らしやすさ、魅力などの様々な情報を、市内外に戦略的に発信します。
令和8年度に地域へ移行される中学校の部活動については、関係団体と連携し、円滑な移行に向けて準備を進めてまいります。さらに、中学生の参加を契機とし、文化芸術・スポーツ活動の促進とともに、地域の活性化へつなげてまいります。
次に、体系のもう一つの柱である、「市民生活を支える基盤強化」についてです。
市民の皆さまの文化と知性を育む環境を整え、健康で利便性に富む安全安心な暮らしを目指して、この分野を「市民生活を支える基盤」として一括して捉え、「施策の束」の実行性を高めることとしました。
将来世代に不安なく引き渡すという視点と、現世代にこのまちに住む充足感を感じてもらいたいという双方を認識して、強固で良質な生活基盤の構築に努めます。
併せて時代のニーズに応え、かつ一人ひとりに行き届く行政サービスの提供を目指し、市民生活とともにある市役所の存在意義を追求してまいります。
まず、「人生100年時代の暮らしと生きがいを支える施策の束」についてです。
「人生100年時代」とも言われる今日、住み慣れた地域で安心していきいきと暮らせるまちは、誰もが願うものです。そのため、健康寿命の延伸に向けた取組のほか、地域でのつながりの創出が重要となることから、地域福祉施策に積極的に取り組んでまいります。
(仮称)徳山北部拠点施設整備事業については、現在、施設建設工事に着手しており、令和8年度の供用開始に向けて着実に取り組んでまいります。
住民主体の地域づくり活動や生涯学習の拠点である市民センターについては、施設分類別計画の優先度に基づき、順次整備を進めます。
地域における自主的・主体的な活動を、将来にわたり持続可能なものとするため、鹿野大潮地区、渋川地区に加え新たに須金地区にも地域おこし協力隊を配置し、地域づくり活動を支援するとともに、隊員の定着につながる活動に取り組んでまいります。
近年増加傾向にある帯状疱疹(たいじょうほうしん)については、発症や重症化を予防するため、65歳以上の方には定期接種以外に現在の助成制度を1年間継続するとともに、病気や治療等で免疫機能が低下した50歳以上の方も対象として、ワクチン接種にかかる費用の一部を助成します。
オーラルケアの取組としましては、令和7年度から、就労世代を対象に、職場での歯科のスクリーニング検査や保健師等による健康セミナーを行い、職域連携を図りながら市民の健康づくりを推進してまいります。
認知症の人や家族が暮らしやすい共生社会の実現を目指し、「新しい認知症観」に基づく普及啓発、認知症予防、本人・介護者の支援、社会参加に向けた取組を推進します。
次に、「安全安心な暮らしの環境を整備する施策の束」についてです。
全国各地にて自然災害が頻発・激甚化している中、防災・減災意識のほか、インフラの強靭化の推進が重要とされております。
本市においても、自然災害から市民の生命と財産を守ることを第一に優先し、災害に強いまちづくりを推進してまいります。
また、市民生活の安全安心を確保するため、関係機関と連携し、生活環境の保全に努めてまいります。
本市が管理する約800の橋りょうについては、「周南市橋梁長寿命化修繕計画」に基づき、引き続き適切な維持管理に努めてまいります。現在、架け替え中である古川跨線橋については、鉄道事業者などの関係機関と連携し、一日も早い完成を目指してまいります。
道路インフラの整備については、「周南市国土強靭化地域計画」に基づき、野村一丁目7号線や中開作線の整備工事を引き続き行うとともに、臨海部と国道をつなぐ中溝線についても計画的に進め、企業活動や市民生活に密着した幹線道路や生活道路の整備に取り組んでまいります。
空き家については、防災・防犯、衛生、景観など多岐にわたる大きな問題につながることから、所有者への支援を強化することで、空き家の発生抑制、適正管理及び利活用の推進を図ってまいります。
本年2月に民間と連携して設置した「空き家総合相談窓口」を通じ、空き家所有者への支援を強化することで、空き家の適正管理や増加抑制を目指します。また、引き続き、「空き家情報バンク」や「空き家リフォーム事業補助金」による空き家の活用と定住を促すことで、人口減少の抑制に繋げてまいります。
野犬対策については、引き続き、県と連携し、野犬を増やさない取組を推進します。また、保護された犬の譲渡に係る支援や、ペットの終生飼養の市民啓発など、動物愛護の意識の醸成を図ります。
日々のごみ出しが困難となっている高齢者等の生活を支援するため、一定の要件を満たす世帯を対象とした戸別収集を試験的に行い、課題の整理を進めます。また、収集時にごみが出されていない場合などには、併せて安否確認も行ってまいります。
新南陽市民病院の増改築につきましては、現在策定している基本構想・基本計画に基づき、令和7年度は今後の整備スケジュール等を検討してまいります。
複雑化・多様化している人権問題に対しては、令和7年度からの第3次男女共同参画基本計画も踏まえながら、人権尊重の視点に立ち、多様性を認め合い、誰もが自分らしくいきいきと輝くまちを目指し、引き続き、人権教育・啓発を進めてまいります。
次に、「高い行政力と職員力を構築する施策の束」についてです。
市民ニーズが多様化・高度化する今日、変化をおそれず、時代に適応する柔軟さを備えて、質の高い行政サービスの提供に努めていく必要があります。
職員一人ひとりが意識改革やコンプライアンスの取組を徹底し、高い行政力でまちづくりを推進してまいります。
公共施設等の総合管理につきましては、公共施設の維持管理や更新を行い、令和7年度においては策定から10年経過する「周南市公共施設再配置計画」の見直しを実施します。
哲学者の鷲田(わしだ)清一(きよかず)さんは哲学のもつ一面として、著書『哲学の使い方』の中で、「哲学は学問というよりは、人びとの生活そのものをいわば軸として、背骨として支えてきたものである。社会構築の理念として掲げられてきたものである。それを再認識する作業として、さらにそれを未来に向けて提示するものとしても、哲学はある」と語っています。まさしく本市が未来に向けて提示する「第3次まちづくり総合計画」に哲学を持たせたいという私の思いと一致するところと考えます。
本市のパーパス「2050年を乗り越えられる周南市になる」に掲げる2050年まで、残すところ四半世紀に迫りました。市役所の存在意義を問われる時代が到来しています。パーパスを一層浸透させ、職員と力を合わせて施政に臨む覚悟です。
私は、これからの本市は「存在感のあるまち」を目指していくことも大切だと考えています。存在感とは「確かにあるという感覚」です。
本市の人口は、令和2年国勢調査の結果によると、全国1741市区町村の中で202位です。しかし、全国に18箇所しかない国際拠点港湾を持ち、これも全国に9箇所しかない石油化学コンビナートを有し、新幹線のぞみが停まる16の駅のひとつがあり、さらに、令和5年の経済構造実態調査の結果による製造品出荷額等は、全国31位、中国地方4位、県内1位を誇り、そして、高度医療機関や公立大学を擁し、まさしく存在感のあるまちになりつつあります。
ただ、ここでいう存在感は市外の人たちの印象や各種のランキングで示されるものだけでなく、市民の皆さまの印象や実感に根幹があるものと考えます。そして「周南市は現世代の幸福は無論のこと、将来世代の幸福にも真剣に取り組んでいる」という将来志向を、意欲と実効性の面からも市民の皆さまと共有し、市民・企業・市役所の信頼のトライアングルをさらに強固なものにして、地域風土の進化も促していくことが「存在感のあるまち」に近づく秘訣だと確信しています。
このたびの総合計画は「品格と誇りのある住みたくなるまち、未来が生まれるまち」を目指してきた軌跡上から生まれたものです。
今日まで「第2次まちづくり総合計画」の推進において、ご尽力ご協力を頂きました多くの市民の皆さまや関係者の皆さまに心から感謝を申し上げます。
引き続き「第3次まちづくり総合計画」に入らせて頂き、計画の主意を実現すべく懸命に努めてまいりますことを、謹んでお誓い申し上げたいと思います。
これからも、市民の皆さま、市議会議員の皆さまのご理解と温かいご支援をお願い申し上げ、令和7年度の施政方針といたします。
令和7年2月19日
周南市長 藤井 律子