師走になると、山では木枯らしが吹き、朽葉に霜が降り、白雪が舞う日がやってきます。古来、日本人はこの季節の山の姿を「山眠る」と表現してきました。
少女時代の私は、この言葉の美しい響きに感動しながらも、いつの頃からか「山は眠らない」と、思い始めるようになりました。
それは梨農家に育った特有の感覚かもしれません。
収穫後の農園は、果樹の足元を掘り起こし、果樹がしっかりと栄養を蓄えるよう大量の堆肥を施す土壌づくりに追われます。
毎年それを見てきた私には、冬場に果樹が眠っているとはとても思えなかったのです。
その後、晩秋に葉が落ちるのは、
「木の内部に、新たに生まれようとする力がわき起こり、その勢いに押されて、古い葉が落ちる(注)」からですよと、新たな命が冬に育まれていることを教えてくれるものに出会いました。
それは生物の本ではなく、なんと古典の「徒然草」の一節でした。(注:『徒然草』木村耕一著:万年堂出版)
私は、この自然界の教えに習い、「新たに生まれようとする力」を育て、「その勢い」に弾みをつけ、従来の考えに固執しないように努めてまいりたいと思います。
年の瀬も近づきます。
市民の皆さま、どうぞ良いお年をお迎えくださいませ。