秋の日のつるべ落としを実感するころ、各地の神社では一年の収穫に感謝する秋祭りがやってきます。私はこのお祭りがとても待ち遠しく、当日は近所の神社に出かけ友達と一日中遊びました。
私の家には何事にも優しい仏様のような祖父と、厳格で滅多に笑顔を見せない曽祖父の二人の「お爺さん」がいました。
2歳になり、秋祭りが近づいたある日、私は何かの拍子にお湯の入った鍋に尻もちをつき、お尻に大火傷を負ったことがありました。傍にいた曽祖父がすぐさま私を抱えあげ井戸水で冷やし続け、梨園で仕事をしていた父は慌てて帰ってくるなり私を背負い、自転車で診療所に駆け込んでくれました。何度も何度も「代わってやれるものなら」と心配していた曽祖父は、治療を終えて帰宅した私を真っ先に出迎え抱きかかえて涙ぐんでいたそうです。
私にその日の記憶はありませんが、診療所の先生のお陰で火傷の痕跡も残らず完治することができました。
地域にお医者様がいて下さることがどれほど安心で有難いかを、私は自分事として心に刻むことになりました。中山間地の医療を支えてくださる皆様には、ただただ頭が下がり感謝するばかりです。